本記事では上記のような疑問を解消していきます。
本記事でわかること
・行政書士向け保険の「賠償責任補償制度」とは?
・行政書士としてその他検討したい保険
行政書士は個人事業主なので仕事上の責任は自分1人で負う必要があり、これから事務所開業する人にとって損害賠償への備えは気になるところかと思います。
結論から言うと、行政書士向けには、全行団という組織が提供している「賠償責任補償制度」というのがあり、加入すれば業務上想定される損害賠償請求に対し保障を受けることが可能です。
本記事では、行政書士事務所開業済みの筆者が、「賠償責任補償制度」がどのようなものか紹介していきます。
【行政書士向け保険】「賠償責任補償制度」とは?
補償制度の概要
行政書士向け保険として、全行団が提供する「賠償責任補償制度」というのがあり、その基本補償に「行政書士賠償責任保険」が含まれてます。
この制度は、行政書士や補助者、その他使用人が行政書士業務に起因した発生した事故において、損害賠償責任を代わりに負担することを目的としてます。
損害賠償額は数百万や数千万にも上ることがあり、一個人事業主である行政書士がそれを支払うのは容易ではありません。
自分は大丈夫と思っていても、不足の事態で損害が発生することもありますし、万が一損害を与えてしまった顧客のことを考慮しても保険に入っておくべきでしょう。
保険金の種類としては「損害賠償金」の他、「訴訟費用」や「弁護士報酬」等の費用も含まれているので、安心して業務を遂行できます。
損害賠償請求の事例
損害賠償請求の事例として挙げられていた内容の一部は以下の通りです。
風俗営業許可申請で保護対象施設の有無の判断を間違えた:約3,400万円
入札参加資格登録審査申請書の作成を間違えた:約1,300万円
建設業許可の更新手続きを忘れた:約1,000万円
例えば、風俗営業許可申請の場合、「許可が取れると聞いて店舗の準備などをしたのに不許可となり、数千万以上の損害となった」といったケースかと思います。
行政書士業務を行っているなら起こりうることであり、賠償額も多額となっていることがわかります。
保険料
保険料は以下の通り補償限度額によって異なります。
補償限度額(1請求) | 補償限度額(保険期間中) | 自己負担額 | 年間保険料(行政書士1名) |
1億円 | 3億円 | 10万円 | 20,600円 |
5,000万円 | 1.5億円 | 10万円 | 17,500円 |
3,000万円 | 9,000万円 | 10万円 | 15,500円 |
500万円 | 1,500万円 | 10万円 | 5,000円 |
※補助者等がいる場合は別途追加料金がかかります。
上限の保険料は20,600円となっており、1請求あたり1億円、3億まで保険金を受け取ることが可能です。
開業直後だと何かとお金がかかりますから、少なくない保険料と感じるかもしれませんが、安心して業務を行っていくためにも、なるべく補償限度額が十分となるようなプランにて契約することをおすすめします。
行政書士が検討したいその他保険・共済制度
本章では、行政書士が検討したいその他保険・共済制度について紹介していきます。
所得補償保険
所得補償保険とは、病気やケガなどで長期間働けなくなった際に保険金を受け取れるという保険サービスです。
行政書士は個人事業主であり、会社員のように休職などはなく、働けなくなれば当然収入も途絶えてしまいますから、そうした時の備えとなります。
特にご家庭をお持ちの方は検討しておいたほうがよいでしょう。
行政書士向けの所得補償保険も全行団から「行政書士新団体医療補償制度」という形で提供されてますし、その他民間の保険会社でも個人事業主向けの所得補償保険が提供されてます。
個人年金保険
行政書士は個人事業主ということで厚生年金ではなく、国民年金となり、一般的な会社員と比べて老後に受け取れる年金額は低いです。
安定した老後を送るための備えとして、個人年金保険もおすすめです。
個人年金保険とは、公的年金では不足する部分を補う私的年金という位置づけで、公的年金と同様に毎月積立をし、払込期間終了後、保険料と運用益を受け取ることができる保険サービスです。
所得控除も適用できるケースもあって節税効果も期待できます。
国民年金だけでは老後が不安という方は個人年金保険も検討してみてはいかがでしょうか。
小規模企業共済
小規模企業共済とは、会社員と比べて老後の備えが不足しがちな個人事業主・自営業向けに独立行政法人の中小企業基盤整備機構が提供している退職金制度です。
掛金は月1,000円から70,000円まで設定でき、掛金全額が所得控除の対象となるため、節税効果も期待できます。
加えて、一括の退職金と受け取る際にも退職所得控除の適用があるので、受け取る時の税負担も軽くなります。
また、貸付制度もあり、行政書士事務所経営において資金調達したい場合にも利用可能です。
掛金を支払う余裕があり、老後の生活資金をより着実に確保したいなら小規模企業共済を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
行政書士は個人事業主であり仕事の責任は1人で負う必要があります。
顧客から多額の損害賠償請求をされて、事務所経営が破綻することのないよう「賠償責任補償制度」はぜひ加入しておきましょう。
その他にも、個人事業主である行政書士は病気やケガ、老後の資金など社会保障が薄くなりがちです。
所得補償保険や個人年金保険、小規模企業共済といった保険・共済制度をうまく活用して、事務所経営を安定させ、老後の備えとしましょう。
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