行政書士業務

【行政書士が解説】会社設立のメリット・デメリットとは?法人化の目安と合わせて解説

「フリーランスは法人化したほうがいいって聞くけど実際どうなの?」

「フリーランスはどのタイミングで法人化するべきなのか収入の目安を知りたい」

上記のような疑問を抱えていませんか?

フリーランスは自由な働き方ができるという魅力がありますが、一方で立場的に弱かったり、社会保障が薄かったりします。

そんなフリーランスも法人化をすれば、そうしたデメリットをある程度解消できますし、仕事もより幅を広げることができるでしょう。

そこで本記事では、現役行政書士の筆者がフリーランスが法人化するメリットやデメリット、タイミング・目安を詳しく説明していきます。

フリーランスが会社設立するメリット

フリーランスが法人化するメリットはたくさんあります。

信用面のアップも重要ですが、税務上ぜひ利用したい仕組みが多いのでしっかり把握しておきましょう。

信用がアップする

法人化することで事業の信用がアップして、クライアントとしても取引がしやすくなるので、案件の受注がしやすくなります。

事業者本人にとっても、信用があることでローンやクレジットカード、賃貸などの審査に通りやすくなるというメリットもあります。

フリーランスだと収入があっても賃貸やクレジットカードの審査に落ちるということは少なくありません(私も1年目に苦労しました)。

また、法人であることで補助金・助成金を利用しやすくなるという側面もあり、資金調達がしやすくなります。

法人化することで仕事もプライベートもより安定感を増すことになるでしょう。

法人の責任となる

もし仕事で何か問題があった時、個人事業主だと「無限責任」ですが、法人では「有限責任」です。

例えば、借入金があったとした場合、個人事業主であるフリーランスは会社の財産を処分しても足りなければ自分の個人的な財産を処分してでも支払う責任がありますが、法人なら出資分だけ責任が及ぶため、支払う義務は個人的な財産にまで及びません。

もちろん未払いや滞納はあってならないことですが、事業を行う以上は起こりうることですし、万が一のことを想定しておく必要があります。

支払う額も大きいものとなる可能性もありますから、支払いの責任が個人に及ばないのは大きなメリットと言えます。

高収入ほど節税効果が高い

法人化することで様々な節税効果が期待できます。特に所得税と法人税の税率の違いは大きいです。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円から330万円 10% 97,500円
330万円〜695万円 20% 42万7,500円
695万円〜900万円 23% 63万6,000円
900万円〜1,800万円 33% 153万6,000円
1,800万円〜4,000万円 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

参考:国税庁「所得税の税率」

個人事業主であるフリーランスの場合、所得税の最高税率は45%にもなりますが、法人税の場合は15%から20%前半です(法人の種類や資本金によって異なる)。

この点だけ見ると法人のほうが税負担が軽くなってますので、所得税の負担が大きいという人は法人化するだけで、税負担を大きく軽くできるというメリットがあります。

生命保険料控除がある

個人事業主だと事業主にかけた生命保険の保険料は経費とできず、一部が控除の対象となるだけですが、法人では役員にかけた保険料を経費とすることができます。

生命保険は毎月発生する費用で、保険商品によっては額も少なくないでしょうし、これを経費とできるかどうかはかなり大きいと思います。

生命保険に負担を感じているというフリーランスの方は、法人化により経費化できるという点を覚えておいたほうがよいでしょう。

欠損金の繰り越し期間が10年と長い

法人では欠損金を翌年以降に繰り越すことができ、将来の所得と相殺することで税負担を減らすことができます。

例えば、今年が100万円の赤字で翌年100万円の黒字の場合、赤字分と黒字分を相殺し、課税所得を0円にできる、ということです。

繰り越しできる期間は10年とかなり長いので、長期的な事業計画の下、税負担の軽減を実現できるでしょう。

2年間の消費税支払い免除

法人化すると消費税の支払いを2年間免除とすることができます。

消費税は売上が1,000万円を超えた場合に支払う税金となっており、高収入のフリーランスの方にとって大きな負担となるでしょうから、2年間といえど免除できるのは大きな節税効果と言えます。

自宅を社宅にして経費化

個人事業主でも事務所として使っている部分の自宅を経費化できますが、法人では自宅の部分も一部経費とすることができます。

具体的には、賃貸している自宅を会社名義とし、「社宅」扱いにすれば、事務所ではなく居住スペースであっても一部を経費にすることが可能です。

自宅兼事務所の家賃が負担となっているフリーランスの方には、法人化により大きな節税効果が期待できるでしょう。

日当を経費にできる

法人化することで、出張にかかった「日当」を経費とすることができます。

この「日当」では、宿泊費や交通費だけでなく、それ以外の部分(外食など)も日当として支払うことが可能です(全ての費用を経費にすることはできません)。

出張が多くて、それに伴っていろんな出費が多いというフリーランスの方は、この「日当」を経費化することによる節税効果は大きいでしょう。

厚生年金に加入できる

個人事業主のフリーランスの方は国民年金への加入となりますが、法人となれば厚生年金に加入できるようになります。

国民年金だけだと将来受け取れる年金受給額が少なく、老後の生活も余裕あるものとならない可能性があります。

将来受け取れる年金を少しでも多くしたいというフリーランスの方は法人化するメリットは大きいでしょう。

退職金がもらえる

法人化によって、普通の会社員が退職金をもらえるように、会社から事業主に対して退職金を支払うことができます。

退職金制度がない個人事業主のフリーランスだと、老後の生活資金の確保に苦労する可能性がありますから、退職金を支払えるようになるのは大きなメリットです。

また、退職金は損金に算入できることから節税効果も期待できます。

傷病手当金の給付をもらえる

個人事業主のフリーランスは会社員のように傷病手当金を受け取れませんが、法人化すれば、ケガや病気で休業した場合に傷病手当金を受け取れるようになります。

フリーランスはケガや病気で働くことができなくなった場合に収入が0となるリスクを常に負っていますので、万が一の備えは重要です。

養っている家族がいる時などは特に、ケガや病気への備えとなる傷病手当金を受け取れるのは大きなメリットです。

なお、フリーランス向けの保険(フリーナンスやフリーランス協会など)では、ケガや病気時の所得補償をしてくれますので、現時点では法人化を検討していないがケガや病気への備えはしておきたいという人は検討してみることをおすすめします。

人材を確保しやすくなる

法人となることで厚生年金や退職金、傷病手当金など保障が厚くなるので、雇用される側としても安心して採用に応募してくれるようになります。

また、単純に個人事業主ではなく、法人という形態から信頼も得やすくなるはずです。

法人化によって優秀な人材をより確保していけるようになるでしょう。

決算期を自分で選べる

個人事業主であるフリーランスの場合、決算期は12月となり、確定申告の時期も2月15日〜3月15日と決まっています。

人によっては、その時期が一番忙しいから確定申告どころではないというケースもあるかと思います。顧客が一番多い時期に本業に集中したいというケースもあるでしょう。

それに対して、法人では決算期を自由に設定可能です。つまり、繫忙期をずらして決算期を設定できるというメリットがあります。

事業の幅が広がる

ここまで見てきた通り、法人化によって、社会的信用が上がり、人材も確保しやすくなるため、取引先が増えて、会社の規模も大きくしやすくなります。

1人で事業を進めることも可能ですが、案件によっては複数人で対応しないとできないものもあります。

法人化によって、より規模の大きい案件を受注できるようになるでしょう。

事業の継続が容易になる

個人事業の事業主が死ぬと、プライベート用だけでなく、事業用の口座も凍結され、遺産分割が済むまではお金を引き出せません。

そのため、場合によっては取引先などへの支払いが滞るなど事業の継続ができなくなる事態も発生するリスクがあります。

対して、法人だと会社の財産は会社に帰属するため、事業主が死んでも口座などは凍結されず、支払いが滞るといった事態も避けることができます。

また、雇用などもあらためて手続きする必要はなく、会社の代表者を変えるだけですむのもメリットです。

フリーランスが会社設立するデメリット

フリーランスが法人化すると、デメリットもいくつかあります。

デメリットもしっかり把握した上で法人化を検討しましょう。

社会保険料の負担が大きくなる

法人化すると厚生年金保険料と健康保険料の負担が増えてしまいます。

いずれも加入義務があるので、負担しないわけにもいきません。

従業員や家族も加入しているとなると、社会保険料の負担はかなり大きなものとなってしまうでしょう。

法人化の際には社会保険料の負担をしっかり把握しておきたいところです。

設立時にコストがかかる

法人化する際には、登記と印紙などに費用がかかり、株式会社では20万~25万程度は最低限かかると見ておく必要があります。

加えて、設立手続きを司法書士や行政書士に代行してもらう場合は、その代行費用も負担となります。

開業届を出すだけの個人事業主と比べるとコストがかかるという点は留意しておきましょう。

赤字でも税金が発生する

個人事業主の場合は利益がなければ税金は発生しませんが、法人の場合、会社として利益がなかったとしても「均等割」を毎年7万円ほどは支払う必要があります(従業員数や資本金、都道府県によって変化)。

前述の通り、法人は損金の繰り越しができるメリットはありますが、事業の経営状態によっては均等割が負担に感じるかもしれません。

毎月の給料は固定となる

法人だと役員報酬を年度の始めに決めたらその事業年度は基本的に途中で変更できません(例外はあり)。

個人事業主のように自由にお金を使えなくなるので注意が必要です。

また、赤字になったからといって簡単に報酬額を変えることもできません(一定の条件で役員報酬の減額が認められるケースはあります)。

事務・税務処理が大変になる

法人になると、貸借対照表や源泉徴収票など税務上作成するべき書類が増えるため、事務処理の負担が増加します。

税理士などに税務処理の代行や相談をするのにも費用がかかってしまいます。

何かとコストはかかりますが、税務処理をしっかりして節税対策をしていくようにしましょう。

フリーランスが法人化する目安・タイミング

フリーランスが法人化するならどのタイミングがいいのか気になるところだと思います。

収入が少ない段階で法人化しても節税効果は期待できず、税の負担が増えるばかりです。

法人化する上で目安となる収入などについて説明していきます。

課税所得が900万以上

所得税の税率を考慮すると、フリーランスの課税所得が900万以上が法人化に適したタイミングです。

所得税の税率は、課税所得が695万円〜900万円で23%、900万円〜1,800万円で33%となっており、900万円を境に税率が一気にアップします。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円から330万円 10% 97,500円
330万円〜695万円 20% 42万7,500円
695万円〜900万円 23% 63万6,000円
900万円〜1,800万円 33% 153万6,000円
1,800万円〜4,000万円 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

対して、法人税は15%から20%前半ですから所得税の税率のほうが高いです。

所得税の税率は最終的に45%まで上がっていきますから収入が上がっていくにつれて法人税のほうが税負担がより軽くなっていきます。

売上が1,000万超え

フリーランスは、売上高が1,000万円を超えると、その2年後から消費税の納税が義務となります。

前述の通り、法人だと最初の2年間の免除期間がありますので、消費税分の税負担を軽減できます。

消費税の負担も大きいものとなりますから、消費税を負担することとなる売上1,000万超を目安として法人化を検討するのも選択肢です。

経費の負担や社会保障を検討している時

ここまで課税所得や売上高をベースに法人化のタイミングを検討してきましたが、そこまでの収入がない場合でも、家賃や保険料などを経費化し、節税対策をしていきたいという場合は法人化するメリットは大きいです。

また、法人なら厚生年金や退職金を利用できるので、社会保障も手厚くなります。

個人事業主よりも節税効果が見込まれて、社会保障も厚くしていきたいなら法人化も検討していきましょう。

まとめ

今回はフリーランスが法人化するメリット・デメリット、目安・タイミングについて紹介させていただきました。

本記事の法人化のポイントは以下の通りです。

・社会的信用がアップ
・節税効果が高い
・人材を確保しやすい
・設立コストがかかる
・毎月の役員報酬が固定
・赤字でも税金発生(均等割)
・社会保障が厚くなるが負担も増
・法人化から2年間消費税の免除がある
・課税所得900万以上/売上1,000万超が目安

上記のようにメリットは大きいですが、デメリットもあります。

節税効果を高め、税務処理を適切に行うのは専門的な知見が必要となってきますので、税理士などに相談しつつ、法人化を検討していくようにしましょう。

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